学芸員のこぼれ話「平田郷陽—児 歓ぶー」

平田郷陽 (1903-1981)

 郷陽は「活人形」と呼ばれる幕末~明治時代に見世物小屋で人気を博した、まるで生きているような写実的な人形を作る職人のもとに生まれ、その技法を学んだ。当時の人形は玩具という認識であり、郷陽はこの評価から脱却した“人形芸術”という地位を獲得すべく作家活動を始める。顕著に見られる変化として、活人形職人時代は等身大に近い巨大な作品を作っていたが、人形作家時代には作品が小型化していく傾向がある。

 本作「児、歓ぶ」は、子どもが雀を捕まえ、嬉しそうに捕まえたよ、と見せる一瞬の喜びの顔を切り取った作品である。大人になってしまった私のような人間が思ってしまう「鳥獣保護法というのが…」という、薄汚れた心を晴れやかにさせ、ほっこりとさせる作品である。当美術館にこの作品を見に来られる方がいらっしゃるほど、人気の作品でもある。

作品の制作年代は正確に○○年というのが判明しておらず、1940年代という事のみが分かっており、この頃は太平洋戦争真っ只中、若しくは終戦後すぐの頃であり、郷陽も素材を確保するのに苦労したと述懐が残されている。この児が着ている着物の色を鑑みるに、比較的手に入れやすい素材である玉ねぎの薄皮から煮だした液体で染めていると考えられる。昨今では、玉ねぎの皮に含まれるケセルチンに血圧を下げる効果やダイエットに良いなどと健康マニアにもてはやされているが、染織の世界では玉ねぎの皮は手ごろに手に入る自然素材としてしばしば使われることがある。こういった植物などの天然素材を用いて染織する方法を「草木染め」といい、化学染料で染めたものと区別がなされる。

脱線で締めさせていただくことになるが、

私が染織の勉強で驚いたことのなかに、昆虫から得られる染料も「草木染め」と分類されるそうで…、食物連鎖を辿れば植物に繋がるよね、とこじつけたのは良い思ひ出。